■木材の塗装



 一言に木工用塗料といってもあまりに沢山の種類がありますので日曜工作ランドで使用している塗料を中心に説明します。

例によってアカデミックな分類から説明したいと思います。
 

■塗膜形成による分類
造膜型塗料 木材の表面に塗膜を形成する塗料。いわゆるペンキ、ニス、ラッカーなどがこれにあたります。フローリングや、市販の木製家具は造膜型塗料で塗装してあります。
含浸型塗料

木材に含浸し、表面に塗膜を形成しない塗料。ステイン、オイルなどがこれにあたります。造膜しませんので一般につやは出ません。市販品の家具ではあまりお目にかかることがありません。

次に、透明度による分類です。
■透明度による分類
着色塗料 下地を隠蔽(いんぺい)する塗料。木材に塗ると、木目が見えなくなります。木工ではあえて木目を消したい時以外は使用しません。
半透明塗料 着色するが木目が見える塗料。木材の塗装では木目の美しさを生かす為に、家具や木工製品ではこのタイプが主流です。
透明塗料 いわゆるクリア塗料のことです。
ステイン 顔料や染料を木材に含浸させる為の塗料のことです。
さらに、成分による分類です。
■成分による分類
油性塗料 油系、有機溶剤(シンナー・石油)系塗料の総称です。臭いがきついのと刷毛を洗うのが面倒なのが難点。ただ、浸透性は高いのでステインでは主流です。
水性塗料 水で刷毛を洗えるので便利です。水性だから水に濡れると溶けるように思われますが違います。硬化は化学的結合にるものですので硬化後は水溶しません。成分は合成樹脂です。
自然塗料 天然成分による塗料です。


さて、実際の塗料と塗装の解説をする前に何点か重要なポイントを紹介しておきます。

<塗装の原点は濡れ色の表現>

写真の右半分は水に濡らしたものです。水に濡らしただけで深み(立体感)がでます。
カラスの濡れ羽色などといいますが、木材のもその美しさを表現する上で、濡れ色を表現することが原点です。

<美しさが強調される反面、欠点も強調される>

塗装(濡れ色に)することにより木の表面の表情が強調されます。これは反面、欠点も強調されることになります。例として木繊維の毛羽立ちが起こりざらざらする、製材時のプレーナー(かんな)跡やきずの部分が濃くなって目立つなどです。
表面の状態が良くない場合はサンドペーパーで素地調整しましょう。ただ注意点として番手の大きいサンドペーパーでゴシゴシやると木目の繊維が切れてかえって塗りムラとなることがありますので注意してください。仕上げは320番以上で。 (きれいに製材されている木材はかえって何もしない方が良い場合もありますのであくまでも表面をよく観察してください)

それではいよいよ実際の塗料と塗装の紹介に入ります。
 

■ガーデン用塗料(木部水性塗料)


 <分類>
造膜型塗料・半透明塗料
※水性のものと油性のものが市販されています。

<商品例>
アサヒペン:ガーデンカラー、ALESCO:ランバーカラー

<塗装方法>
刷毛塗り、もしくはローラー塗り。

<備考>
類似した塗料缶が沢山並んでいますが「半透明」のタイプを選んで下さい。刷毛が水洗いできる水性タイプをお薦めします。 屋外・屋内兼用タイプは防腐剤、防虫剤を含んでいます。

<長所>
ホームセンターで簡単に手に入ります。木工用としては最も安価で、色も豊富です。

<短所>
半透明塗料刷毛塗りの短所として、塗り重ねると色が濃くなります。従って、1回塗りと2回塗りで色が変わります。ムラなく塗装するコツとしては乾く前に刷毛で塗料を均一にすることです。
乾いても当分臭いが残ります。完全に臭いが無くなるまでには少し時間がかかります。
 

写真は、ALESCO:ランバーカラー(水性アクリル塗料)
シャドウ・グリーン色

0.7L入り、3〜5u(2回塗り) ¥1500〜¥2000 

半透明塗料ですので、塗布量のむらがそのまま残ります。刷毛跡も残りますので、木目に沿って塗るのもコツです。

下に説明するステイン+ニス(透明塗料)との違いは、塗膜に着色されているので、立体感が少ないことです。

シャドウ・グリーン色と、色のツートン塗装で仕上げるとこんな感じになります。
■ステイン+ニス


 <分類>
ステイン:含浸型塗料
ニス: 造膜型塗料・透明塗料
※水性のものと油性のものが市販されています。

<塗装方法>
ステイン:刷毛塗り後、ウエスで拭取り。
ニス: 刷毛塗り。

<備考>
ステインは顔料や染料を木材に含浸させる為の塗料ですので、汚れを防いだり艶を出したりする機能はありません。ステインで着色後、ニスで仕上げることによって、「濡れ色」になります。さらに汚れを防ぐ機能も果たします。
ステイン(含浸型塗料 )は、刷毛塗りの後、余分な塗料をウエスで拭き取ります。造膜型塗料と異なり、ムラがでにくいのが長所です。ニスは透明ですのでムラを気にせずに塗ることができます。ニスの替わりにクリアラッカーを用いても構いません。

<長所>
顔料や染料が木繊維の奥深くまで浸透しますので深みが出ます。さらにニスにより艶と立体感(高級感)がでます。
※ フローリングや家具などは一般にこの考え方です。ニスの代わりにサンディングシーラーと呼ばれる中塗り(肉持ち感を持たせる)を施した後、ウレタンクリアーで仕上げます。

<短所>
基本的に違う塗料を2回に分けて塗ることになりますので手間がかかります。
 

左は「水性パステルカラー」右は「オイルステイン」。
いずれも¥1000以下で買えます。

刷毛塗りしたところです。このあと、ウエスで拭取ります。

吸い込みの早い樹種の場合は素早く塗って素早く拭取らないと刷毛塗りのムラが残りますので要注意。

水性のニスを上塗りして仕上げます(刷毛塗り)。

※ニスとクリアラッカーの違い。
ニスはもともと天然成分の塗料で肉持ち感のある(塗膜が厚い)塗料です。セラックニス、 ワニスなどがこれにあたります。現在では合成樹脂のニスが主流です。ラッカーはニトロセルロース系の塗料で、比較的にサラっとしています。

クリアラッカーで仕上げてもかまいません。 (油性ですので、刷毛は使い捨て。もったいないのでこんな小技で塗っています)

家具のような、高級感がでます。
上記ガーデン用塗料(木部水性塗料) との違いは、表面の上塗りが透明であること。表面のクリア層により立体感がでます。

フローリングやダイニングセットなどの家具もやり方の延長にあります。(もっと手が込んでいますが)

■オイルフィニッシュ

 <分類>
含浸型塗料・半透明もしくは透明塗料
※基本的には油性です。

<商品例>
WATOCO OIL(ワトコオイル)、木彫オイル(ワシン)

<塗装方法>
刷毛塗り後、ウエスで拭取り。

<備考>
名前のとおりオイルを染込ませる塗料ですので基本的に表面に造膜しません。オイルフィニッシュにも多くの種類があり、亜麻仁油などの天然成分のものからウレタン樹脂が主成分のも、また、それらをミックスしたものなどいろいろあるようです。オイルフィニッシュの家具は家具売り場でもあまり目にすることはありませんが、 昔、小学校の床に油を塗っていましたね。あれがオイルフィニッシュの原型です。

<長所>
木の味わいを最も素朴に表現できます。 また、ウエスで拭取りしますので刷毛跡が残ることもなく手軽に塗装できるのも長所です。

<短所>
表面に造膜しませんので、クリア塗装仕上げと比べると、汚れがつきやすく掃除もしにくいです。数年ごとにWAX塗りなどのメンテナンスが必要とされています。
 

木工愛好家の中では定番のワトコオイル。
1L ¥2940
W-01ナチュラル、W-12ミディアムウォールナット、W-13ダークウォールナット の3色が代表的ですが、私の場合W-12ミディアムウォールナットを愛用しています。

ワトコオイルのHPはこちら

W-12ミディアムウォールナットで塗った食玩コレクションBOXです。

少しアンティークな感じに仕上がります。浸透性が高いので下地の状態を拾います。

こちらは、ワシンの「木彫オイル」です。ウレタン樹脂が含まれています。

この塗料は表面に薄く造膜します。

木彫オイルで仕上げた椅子です。

写真の椅子は「サクラ」です。サクラのように「銘木」と呼ばれる木目の美しい木材にオイルフィニッシュを施すと木目の美しさが引き立ちます。

■自然塗料


 <分類>
含浸型塗料・半透明もしくは透明塗料
※基本的には油性です。

<商品例>
オスモ ウッドワックス(ドイツ OSUMO社) OSUMO社のHPはこちら
ドイツ自然塗料てしてはその他にリボスアウロなどがあります。
国産の塗料がありますがまだ使ったことがありませんので悪しからず。

<塗装方法>
スポンジ塗り後、ウエスで拭取り。

<備考>
オイルフィニッシュに分類しても良いのですが、最近はあえて区別されています。
オスモ ウッドワックスは植物油と植物のワックス分を主成分としています。

<長所>
ホルムアルデヒドなどのVOCの放出が少ないので子供用の家具などにも
安心して使えます。(塗装後、数日間は油っぽい臭いが残ります。)

<短所>
オイルフィニッシュと同種の塗料ですので同じく表面に造膜しません。
(クリア塗装仕上げと比べると、汚れがつきやすく掃除もしにくいです。 数年ごとにWAX塗りなどの
メンテナンスが必要とされています。)
価格がちょっと高いのが難点です。
 

オスモ ウッドワックス
0125L缶 1,620円 0.75L缶 5,880円
0125Lで約2.5u塗れます。
この塗料は量が少ない割に高価ですが薄く塗り伸ばすことにより結構な面積が塗れます。というか、メーカーのガイドにも薄く塗り伸ばす様に書いてあります。

塗り方を色々試したのですが、写真のようにスポンジを小さく切ってスポンジにつけて手で塗り伸ばすのがいちばんです。(その後ウエスで拭取ります。化粧でいうファンデーションみたいな感覚ではないかと思います。)

私の場合は3123 パイン、3151ダブブルーを愛用しています。左の写真はこの2色を用いた学習机です。

□オスモ社技術資料によるオスモウッドワックス標準工程(更新2004.9.5)
1) サンディングして下地処理(#240以上)
2) 塗装後20〜30分して拭き取り
3) 乾燥時間は12時間、重ね塗りするときは乾燥後 濃い目の仕上にしたい場合は乾燥後に重ね塗り
4) カラー塗装の場合、乾燥後#3101ノーマルクリアーで仕上ると艶のアル落ち着いた 仕上がりが得られる